ブレイクダンスをお金を出して見たいと考えている層がほとんど存在していないことは、現場に出ている人間なら十分すぎるほどに痛感しているだろう。
ストリートダンスという大きな枠組みの中で同志とも言うべき他ジャンルのダンサーですら、まったくブレイクに興味が無い割合は相当に高い。
立ちダンサーからすると、音も聞かずにクルクル回って、フットワークは似たような動きにしか見えないという観念が過去から継続して存在し、それらが薄らいだ現在においても、今度は逆に深化・派生しすぎたがゆえにbboy以外からはどういった観点からブレイクを見ていいかが非常にわかりづらくなっている。
また、下手をするとbboyですら理解できないという事象が発生するほどに価値観が多様を極めている。
同業他社とも言うべき他ジャンルのダンサーですらいまいち理解できない局面が多い中で、果たして一般人がどういった観点から楽しむものなのかを理解するまでにどれくらいの時間がかかるのか。
ブレイクの「人間離れ」したところばかりが注目され続け、一般人の認識が本質から遠ざかっている状態は現在も継続している。
サッカーに興味の無い者がスーパーゴール特集だけを片手間に見ているような状態で、木を見て森を見ずの状態だ。
サッカー観戦にお金を費やす者は、自分が応援するチームであったり、ゲーム全体を味わうためであったり、テレビやネットで瞬間を切り取られただけの映像では飽き足らず、また諸々の事情について理解があるからこそ継続的に会場に赴く。
ブレイクについては、その性質上芸術鑑賞とは趣が異なるため、やはりスポーツ観戦と比較するのが妥当だろう。
ブレイクに対する理解の障壁。
bboyサイドからすると魅力満載にも関わらず興味を示さない一般層の無理解が問題だと感じ、一般層からすると価値が無いものにまで価値を付与し自己満足に浸っているbboyのエゴが問題だとも言える。
また、bboyはブレイク以外を踊れない層が半端じゃなく多いことも経済価値が薄い理由として挙げられる。
bboyがバックダンサーになりました。
パワームーブしました。
数十秒で体力を使い果たしてもう動けません。
スタイルをしました1,2分で体力を遣い果たしてもう動けません。
セットムーブしか無いので音に合わせた振りはできません。
ついでに他のジャンルはできません。
単純にアクセントと割り切って使用される場合は除外するにしても、これでは話にならないわけで。
ダンススタジオでインストラクターが必要になった場合、どちらが選ばれるか。
ブレイクしか踊れない。
ブレイク以外全ジャンル踊れる。
スタジオとしては、集客力を高めるため多種多様なジャンルを掲げ、かつ人件費を抑えた方が当然コストパフォーマンスが良いので後者を選択する。
ダンスを生活の糧とする場合、振付師、インストラクター、バックダンサー、タレント等ある程度進路が限られてくる中で、競争率やレベルが高すぎるものを枝切りした結果、大多数はインストラクターに落ち着くことになる。
なぜかというと、インストラクターの質もピンからキリで、実質誰でもできるからである。
誰でもできるとは言っても経済合理性を鑑みれば付加価値の高い者が選ばれることは至極当然なわけで、あらゆる局面で使いづらいbboyは優先的に除外されていく、ダンス界の窓際族と言っても過言ではないかもしれない。
またピークを維持できる期間が短い、いわゆる選手生命が短く、怪我をする確率が高いことも拍車をかけていると思われる。
bboyシーン自体の経済的な優位性、ダンサーという職種においての優位性、いずれも欠けているのが現状とという認識である。