BBOYINGを始めた動機で最も多いと思われる理由はずばり、回ったらかっこよくて注目される、ということではないかと思います。
そして、ポケットばりのパワームーブを夢想して練習に励むも、あまりの壁の高さに心が折れスタイルに走る、というのが大多数の常道かと思います。
BBOYの本音は、ゴリゴリのパワームーブで馬鹿沸きさせまくって注目されたい、という点に尽きると思います。
にも関わらず、ある程度歴を重ね知恵を付けてくると初志はどこへやらといった塩梅でパワームーバー批判を始めてしまいます。
音を聞いてない。
サーカスのようだ。
ダンスじゃない。
全ての要素を満たしてこそBBOYだ。
実はこうした価値観は情報操作の1つだと思っています。
自分より凄いパワームーバーに対する嫉妬、そしてパワームーバーに対するある種の偏見を浸透させることでスタイルでも勝ちやすくなる土壌を作る、といった具合でパワームーブへの概念を陳腐化させる、といった手法です。
BBOYの大多数はスタイルがメインです。
しかし、ほとんどのBBOYは驚異的なパワームーバーになることを夢想しています。
驚異的なパワームーバーになるためには、気が遠くなるほどの地道な努力、正確なメソッドを備えたアドバイザー、パワームーブを体現するための身体能力、練習仲間のレベル・スタイルの影響、良好な練習環境、尽きぬモチベーション、住んでいる土地・気候などありとあらゆる複合的な要素を必要とします。
そうした状況を誰もが構築できるわけではありませんし、むしろできない方が圧倒的多数かと思います。
こうした現実と理想のギャップが酸っぱい葡萄状態を作り上げ、手に入らないのなら貶めてしまえ、という思想に至ることになるのはごく自然なことではないでしょうか。
圧倒的多数・あるいはベテラン勢が持ち得ている価値観を主流とするのは致し方ないことです。
ワンハンドエアーを連発したとしても、パワームーバーとしては世界一になれるかもしれないが、BBOYとして世界一になることは難しい、という土壌が作り上げられています。
一般人には理解できない、BBOY独特の妙な拘り・括りがあるわけです。
とは言え、パワームーブ至上主義の時代はとっくに過ぎ去り、オールマイティが求められている時代です。
オールマイティになるとさらに難易度が高まり、発想力など運の要素も内包してきます。
しかしこのオールマイティを細分化した時に、スタイルのカテゴリーによる酸っぱい葡萄状態もまた存在していると認識しています。
基本的には1人のBBOYにつき1つのスタイルが主軸になります。
ありとあらゆるスタイルを内包したスタイルというのは非常に難しいです。
ここでスタイラーがパワームーバーを批判するような現象が発生します。
端的に言うと「このスタイルの何が良いのか理解できない」という現象です。
基本は1BBOY1スタイルであることから、とどのつまり自分がやっているスタイル以外は全て理解不能となります。
単純に「ダサイ」と思っているなら話は簡単なんですが、中にはめちゃくちゃかっこよくて真似したいけどいくらやっても自分ができないスタイルであるが故に「理解できない」と発するBBOYも存在します。
要はかっこよくて自分もやってみたいけど全然できない、といったパワームーブに類する話です。
スタイルの中にも酸っぱい葡萄が存在する、というのは厳然たる事実ではないでしょうか。
酸っぱい葡萄であるが故に情報操作が行われているという側面がBBOY界には存在する、というお話でした。